Augustsky

30代ゲイが日々のことを書き綴るブログ

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海街diaryとザ・プロムを観た

海街diaryを観たんですけど、初見なんですけど、年齢を重ねると映画も見方が変わるのだろうなと思いながら見ていて、やっぱりどうしても自分の人生というか実体験を重ねて見てしまう瞬間がありますので、そういう意味で身近な人の死というのは人それぞれ経験するタイミングもまちまちではあるのでしょうけれど、なんか法要とか葬式のシーンが多い映画でありつつも不思議とどんよりしてる雰囲気のない映画で姉妹同士や母親とのかかわり方もだし、長女の自分自身の恋愛と経験してきた人生の折り合いなんかもやっぱある程度年齢を重ねて経験を積んだ状態で見るのと、もっと若い時期に見るのでは違うんだろうということで、年を取るといろんな経験をして、それに伴っていろんなことに寛容になってくるもんだなと思いましたが、いっぽうでそういうある意味自分に甘く他人に甘い感じの感性ではなくてもっとソリッドな感性を持った若いうちに映画をたくさんみておけばよかったなという気持ちにもなりました。

それで、ザ・プロムを観たんですけど、とてもいい映画だと思うんですけど、ちょっと困惑もしました。僕はゲイなのでこういう映画をみると、つい、諸手を挙げて歓迎してしまうところがあるのですが、ちょっとこの作品はブレーキをかける必要がありそうというか、ちょっと突っ走り過ぎなのではないか、立ち止まって考えてみた方がいいのではないか、という気持ちになりました。僕が好む同性愛を扱った作品は、当事者が幸せになって、その周囲の人々もできるだけ幸せになって、それならいいね、ってなものが多いのですが、プロムの場合は、違う価値観で生きる人々をポリコレ棒でボコボコにぶん殴って改心させまくる感じがして、特にショッピングモールでの聖書の引用からのぶん殴りはロジハラ以外のなにものでもなく、多様性のためには別の価値観をぶん殴ってもいいのか、という気持ちになりました。作った人々がどんな価値観なのかはわからないですけど、ライアンマーフィーが監督してるのをふまえると、gleeとか作ってきた人なので、ひょっとすると「啓蒙してやる側」に立つ、「同性愛アドボケイト勢」としては、いわゆる主要な登場人物とその周囲がハッピーゲイライフという感じの作品では、「啓蒙してやる側」として世論を変えるにはもう埒があかない、という苛立ちがもしかしたらあるのかもしれないし、むしろ世論が変わってきたのでちょっと調子に乗って他の価値観踏みにじってるのに気が付いてないのかもしれないですが、さすがに人間理屈だけで生きているわけではないので、ああいう正論らしいことで人の価値観を否定するのには抵抗があるなと思いました。田舎者vs都会的価値観という対立の描き方も、まあ実際そうかもしれんけど、僕が田舎に住んでいる異性愛者であったら、いい気分にはならないでしょうね、既存の価値観に沿って、生まれたままに(それこそゲイがゲイとして生まれて生きるのと同様に)生きてきただけなのに「お前らは間違っている悔い改めろ古い価値観の不寛容な田舎者」という描き方されたら、「お前らのどこに多様性やインクルーシブがあるんだ、傲慢なやつらめ」と思うことでしょう。何度も言うようですが、主要な登場人物とその周囲の行動の変化、という物語なら、ある意味登場人物たちが自分で選んだ結果だと納得できるのですが、既存の価値観や自分達と違う価値観をもつ人々すべてに喧嘩ふっかけてねじ伏せるようなのは賛同できないなと思いました。あと、バリーのお母さんが登場するシーン、バリーは最初母親に帰ってと言っていましたけれど、あれはさすがにないなと思いました。だってカミングアウトして、それにたいして親からひどいことを言われたとかじゃないじゃないですか、エマみたいに追い出されたわけでもなく。バリーの親はただ、あの世代の人々の「現実」に存在していなかったゲイという価値観に戸惑って、病気なんじゃないか、自分達の育て方が悪かったんじゃないか、という純粋な子供を心配する気持ちで行動してたのに、そしてあの日わざわざ隣の州から来てくれたのに、「帰って」って、それはないですよね。あれは全然共感できなかったですし、むしろバリーに腹立ちましたね。ただのドラマクイーンやんけって感じで。親に愛されているだけありがたく思ってほしい。ゲイならとにかく被害者ぶっておいてOKな感じの描き方が雑じゃない?と思いました。あと、最後のアリッサの母親が手のひらくるりで改心してエマと抱き合ったりしてるのも唐突に態度変わりすぎて薬でも盛られたのかな?という奇妙さがあるので、雑だなーと思いました。「娘になんで来たの?」って聞かれて美談風に「なによりも大事なのはあなただから」的な、親の愛で不寛容を乗り越えた風に言ってたけど、お前の企みでぼっちプロムかまされたエマにも、エマのことを大切に思うおばあちゃんとかいるんだぞと、お前仮にも親なら、自分がどれだけ酷いことを、エマにも、エマのおばあちゃんにもしたのかわかってんのか帰れって感じでした。いずれにしても、同性愛を描いた作品でも、ちょっと異色というか、一線を超えたというか、独善的というか、プロパガンダ的な感じがして、多様性を掲げる側がこれでよいのか、という気持ちになりました。同性愛に限らず、何か価値観が異なる者同士が理解するときには、対話が、それもわりと丁寧な対話がとても重要だと思うのですが、今回のこの映画では、なんだか「指導」しているような感じの印象で、これまでの同性愛を描いてきた作品で僕がみてきたものに比べると、やはり上から目線というか、傲慢さを感じる作品だったなと思います。最初にとてもいい映画だと思うんですけど、とか言っておいて全然ほめてないので、好きなところを挙げると、一番好きだったシーンで、かつ共感したのは、わりと初めの方にあった、校長が「舞台を観に行くの最高だよね」って歌ってるところです。舞台や映画を観るって本当に素敵なことだと思いますね。

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