月一日記
こんばんは、梅酒が気管に入ってむせる夜、年齢を感じます。冬を越えるたびにほうれい線が深くなっていくことに抗うこともままならない今日このごろですが皆さまはいかがお過ごしでしょうか。僕は伯母の様態がとてもよくないという知らせを受けて少し心配しています。少しというのは僕の嘘偽りない偽善なしの気持ちですが、伯母はとてもよい人で好きですがあまり人生で関わりがなかったので、日常生活に支障をきたすほどの心配は正直なところしていないということです。これは僕はありがたいことだと思っています。心配するのって自分で止められないからです。こういうふうに思うようになったのは父親が亡くなったときからですが、人の死ってインパクトが大きいじゃないですか。でも僕は幸か不幸か父親の死が日常生活にまったく影を落とすことがなかったんです。葬儀で人前で話すのが苦手な母の代わりに兄が挨拶みたいなのしたときはわりと泣いたんですがそれは僕がめちゃくちゃ涙もろいのと、兄が弔問に来る自分の会社の人たちむけのパフォーマンスになりうる作文を作ってそれを僕がチェックして美しい文章にしたからです。恨み節連ねたって誰も得しないですからねああいう場で。で、こないだ映画見たんです、エゴイストって映画。ネタバレしますから嫌な人は読まないでください。で、男性のカップル（金持ちと若者）がメインで、あと若者のお母さんの３人が基本物語の中でずっと出てくるんですけど、物語の中盤若者が死ぬんですね。で、残された方は亡くなった若者のお母さんの面倒をみようとするけど、そうはいっても別に男女で結婚した相手の親でもなし、どうなのこれみたいな感じでお母さんもちょっと戸惑いつつも受け入れつつも、みたいな感じの、作品が発する問題提起的な見方をすれば日本だと同性婚がないので、こういうふうにいびつになってしまうみたいなこともメッセージとして含んでるのかもしれないんですけど、僕がまず思ったのは若者が死んだタイミングだよなあってことです。あと前もって言っとくんですけど、これ原作があるみたいで、原作読んでから映画見た人と映画だけ見た人だと捉え方がわりと違うっぽいんです。で、僕は映画しか見てません。というディスクレーマー置いときますね。で、そう、死ぬタイミングだなって思ったんです。正直に言っておきますと僕はこの映画のわりと序盤の方、金持ちの方の自宅タワマンを若者が訪ねて帰るあたりで、画面酔いがひどすぎて吐きそうになってしまい、劇場から出ようか迷ったくらいなんですけど（ここで出たらどえらいアンチみたいになってしまうな……）って思って目をつぶって耐え忍ぶことにしたんです、友達と来てたのもあって。なので、若者が死ぬまでのあいだに繰り広げられたエロいシーンはほぼ目を閉じてて見てないんですけど、ということを前提に書きますけど、死ぬタイミングだよなって思ったんです。あれ、惚れた晴れたつって最高潮に浮かれ切ってる時期だったじゃないですか、その頂きに達したところで若者が死んでしまったので、ああいうことになったと思うんですよね。ちなみに自伝的小説らしいので不謹慎みたいな感じかもしれないですけど、僕はフィクションとしての映画と捉えているのであしからず。まあ映画の内容については怒られそうな感想、ってくらいしか書けないんですけど、とにかく僕は人間死ぬタイミングってあるなって思うんですよ。惜しまれつつ……みたいなタイミングもあれば、正直内心ほっとした……みたいなタイミングもあると思うし、それは一人の人間の人生内にどちらも含まれている可能性があるよなって思うんです。去り際じゃないですけど、難しいですよね、基本自分で選ぶわけではないですし。あとこの映画に限ったことではないんですけれど、この映画の感想をぼけーっとTwitterで眺めてて思ったのは、映画（というか小説でもドラマでもアニメでもそうですけど）の捉え方って見てる方の人生経験に依存するというか、半分は見てる作品から受ける心への影響があれど、半分は自分の中の経験が作品から発せられるメッセージを迎えにいく部分があるなと思って、だからこそ同じ作品でも年齢を重ねてから見ると違った捉え方になるんでしょうけれど、個体差がこれすごいあるんだろうなって思ったんです。特に人の死って身近で経験しようと思ってできるわけじゃないじゃないですか。海を見たことがない人や雪を見たことがない人がビーチの匂いや雪山の厳しさを実感として脳内で再現して作品を見ることが難しいように、人の死に立ち会ったことがない人にとっては、見たことのない海や雪レベルの感想になってしまうのかもしれないって思ったんです。そういうことをこの映画を見て考えることができたのは少し有意義だったなあと思いました。
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